le passé simple (単純過去)は、現在から切り離された過去???

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さっき、かなり書いたのにうっかりウインドウを閉じてしまい全ておじゃんです。でも気を取り直して、今日二回目の投稿です。

フランス語を始めて、かれこれ20年になります。でも始めから「日本人の為のフランス語」の必要性を感じていたわけではありません。当初は、参考書に書かれた文法を「そのまま」信じていましたし、動詞の活用に関しても「丸暗記」しようと頑張ったものです。

日本語で書かれた「フランス語文法」が、日本人にはあっていないと思ったのは、le passé simple (単純過去)の説明をフランス語で読んだときの事です。日本語で読んだ説明がそのまま、フランス語で書いてありました。つまり「フランス人が、既にフランス語を話すフランス人(時に子供)向けに書いたフランス語文法」の「日本語への直訳」だったわけです。フランス語を、これから勉強する日本人達に取って,理解しにくいのは当然でしょう。

さて、どんな説明が書いてあったのかというと、le passé simple は「現在から切り離された過去」というものです。これに対して、「現在と、つながりのある過去」があり、これが le passé composé (複合過去)に当たります。 le passé composé は英語の「現在完了形」と形が似ている事もあって、漠然とそんなもんかなと始めは思っていました。

il marche - le présent (現在形)
il marcha - le passé simple (単純過去形)
il a marché - le passé composé (複合過去形)

しかし、よくよく考えてみると、日本語では「動詞の過去形」は、1つだけです。「行く」に対して、「行った」しかないのです。過去の表現で、現在とつながりがあるかどうかは、日本語では問題になりません。いくら説明を聞いても、感覚的に理解する事は難しいわけです。「行ってしまった」というようなニュアンスのある表現はあっても、これもあくまで「行ってしまう」の過去形です。

また、le passé simple は「文学作品の中で主に使われて、日常的にはほとんど使われない」ことから、 le passé simple を覚える必要はないと言う人もいます。確かにこれは一理ありますが、まだ本が読めない子ども達に読み聞かせる「おとぎ話」のほとんどが、 le passé simple で書かれている事実がある限り「完全な無視」を決め込む事も出来ないでしょう。子ども達に向かって「この動詞の le passé simple は?」と聞いても、普通は答えられないでしょうが、この時制で書かれていないと、お話の中に「入っていけない」のです。お話の「臨場感」のようなものが感じ取れないのです。

それでは le passé simple というのは、一体どういう時制なのでしょうか?

単純に言って、これは「お話」の時制です。もっと噛み砕いて言うと、連続してに起こる一連のアクションを表現するのに使われるという事です。どんな言葉でも、お話を語る事は出来ますが、フランス語には、これに「特化した時制」があると言う事になります。だからこそ「おとぎ話」使われるわけです。昔懐かしい「紙芝居」を思い出してください。おじさんが(今は,女性も多いですが)絵を差し替える度に、お話が新展開します。1枚めくる前の「次に何が起きるのだろう」というサスペンスは、le passé simple で書いた「お話」を読む時のサスペンスと実は同じなのです。

変な話ですが「お話」というのは「フィクション」がほとんどです。いくら過去にあったと言う「設定」でも、フィクションはフィクションです。逆に、この設定を「未来」にする事も十分可能です。従って「近未来小説」も le passé simple で書かれるわけです。この点からも le passé simple は「過去の時制」という事は通用しなくなります。文学作品が過去に起きた設定で書かれていた時期に出来た文法用語という文脈を考えると、分からなくもないですが、この時制が実は、「現在から切り離された過去」どころか、単なる「過去」とも、全く関係ないのが分かると思います。日本語でも、おとぎ話は「昔々、あるところに」から始まりますが、フランス語のおとぎ話は "Il était une fois un roi..." (昔々、王様が…)と始まります。この表現に惑わされてはいけません。おとぎ話は作り話、あくまで「フィクション」なのです。

さて、日本語で、この「お話」の感覚を出そうとすると、1つの文の中でとアクションを順番に並べる事になります。こうすると動詞の順番を変える事は出来ません。その証拠に、順番を変えると意味が変わってしまいます。例えば:
 7時に起き,朝食をとり、学校に行った。

アクションの順番を追うというのは、おとぎ話のような「お話」に限りません。自分が、昨日した事、他の人がした事を説明するとき等も同じです。料理のレシピなんかも、これに該当します。手順を間違えたら、おいしい料理は出来ません。といって、こういう表現に全て le passé simple を使う必要はありません。使ったら逆におかしいです。

日常的に自分の経験とかを人に話す時は,助動詞の le présent + participe passé (過去分詞)の形を使います。これを le passé composé (複合過去)と呼びますが、実は le présent composé (複合現在)とでも言った方が実は合っているかもしれません。活用する助動詞 avoir / être は、あくまでも le présent (現在形)だからです。この時制が,感覚的に「現在」に近くなるのはうなづけます。 le passé composé (複合過去)という名称は、文学作品等で多用される le passé simple に対して、日常的に圧倒的に使われる le présent + participe passé の活用形を指するのに考えられた「苦し紛れの名前」と言えないこともないです。

Je me suis levé à sept heures. J'ai pris le petit déjeuner. Je suis allé à l'école.
(7時に起きた。朝食をとった。学校に行った。)

料理のレシピは、l'infinitif(不定詞)か l'impératif(命令法・現在形)が、よく使われます。

Eplucher une carotte et la couper en rondelles. (ニンジン一本の皮を剥き、輪切りにします。)
Epluchez une carotte et coupez-la en rondelles. (ニンジン一本の皮を剥き、輪切りにしてください。)

ここで一番大事な事は、順を追って起こる(起こった)全てのアクションの表現に「同じ時制」を使う事です。これさえ守れば、例えば le présent(現在形)を使って,過去に起きた事を表す事が可能です。これは文学作品にも時に使われ le présent historique(歴史的現在形)と呼ばれます。中国語等、活用のない言語では、副詞を使って、今の事か、既に起きた事かを区別します。それと同じ理屈です。

過去の事を文章で表すのに le passé simple か le passé composé を使って、話の筋を作り、l'imparfait を使って、天気、時間、背景の説明などをします。これの使い分けがちゃんと出来ていれば問題がないのですが、2つの時制(例えば、le passé composé と l'imparfait )を、きちんと使い分けずに使うと、話の筋と、話の背景が、ごちゃまぜになり意味の通らない文章になってしまいます。しかし全ての動詞を le présent に活用して書けば(話せば)、読む方(聞く方)が、筋か背景かの判断をしてくれますので、混乱は避けられます。(慣れてきたら、現在形だけを使うのはやめましょう。やはり「幼い」イメージを与える恐れがあり、知性を疑われる可能性があるので。)

ちょっと長くなってしまいましたが、いかがでしょうか。
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by nsato75 | 2009-05-20 04:19 | 法・時制編
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